俗物による自戒ノート。

家庭と仕事の反省点

人の人たる所以は何か。虚構を語る能力について。

言語である。

 

しかし、情報伝達手段としての言語ならば、他の生物とて使用している。(例:ミツバチ、アリ)

 

さらに、口頭言語であることも、人間特有というわけではない。人間以外にも多くの動物が口頭言語持っている。(例:サバンナモンキー、クジラ、ゾウ)

 

では、人間の言語の最大の特徴は何か。

 

それは虚構(現実には存在しないもの)について語る能力である。この能力のために、人は万物の霊長となった。ゆえに、この能力は人間として根幹部分である。

 

虚構──といっても嘘やデマという類のものではない。具体的には、宗教、国民主義イデオロギーといったものである。これらは皆、実態のない「神話」である。「神話」を紡ぐ能力こそ、人間の根幹である。「神話」を前にしたとき、人間たちは赤の他人であっても恐るべき効率で共同作業を行うこととなる。

 

神話は、大勢で柔軟に協力するという空前の能力をサピエンスに与える。アリやミツバチも大勢でいっしょに働けるが、彼らのやり方は融通が利かず、近親者としかうまくいかない。…(中略)…。ところがサピエンスは、無数の赤の他人と著しく柔軟な形で協力できる。『サピエンス全史(上)』p40

 

近代国家に見られる「虚構」(「神話」)の最たるものがナショナリズムであろう。この「神話」のために、幾人もの見知らぬ赤の他人が恐るべき効率で協働し、他の生物にはなしえぬ生産を行い、そして破壊した。ナショナリズムの起源と正体について、『想像の共同体』において見事に描かれている。それは、実態ではなく、架空のものであり、近代になって形成されたものである。

 

ナショナリズムにしろ、宗教にしろ、イデオロギーにしろ。

 

人間は「共通の神話」によって能力を十二分に発揮し、他の生物を圧倒してきた。これこそが人間の武器であり、生物としての根幹である。

 

ゆえに、「共通の神話」に身を委ねることができない個体は淘汰されてきたし、これからもそうなるだろう。神話に身を委ねることのできない人間は、牙をぬかれた猛獣や翼をもがれた鳥に等しい。

 

これは現代になっても変わっていない。

 

つまり、その集団内で信じられている神話に歯向かう個体は、これからも行き辛い世の中であるということだ。こういう個体は、人間としての根幹部分の能力を脅かす存在なのだから。

 

神話の内容は、実際馬鹿らしいものだったりする。ヘンリー・タジュフェルの実験によれば、「赤色が好きな集団」くらいのものであっても、共通項ごあれば、ある種の身内びいきが発生するとのことだ。(馬鹿らしい!)

 

だから、会社において、馬鹿らしいなという習慣があっても、それが会社の「神話」になっているのであれば大人しく従うのが吉である。

 

どうしても不条理だという思いが拭い去れないのであれば、「ああ、これは神話だかれ仕方ないな」とやや冷めて目線で眺めながらも、表面上は従うしかあるまい。それが人間の生物的宿命なのだから。

 

借金玉氏の記事は、この構造を、平易な言葉でしかも面白く説明している。

 

会社や組織というのは一種の部族です。トライブです。そこにはそれぞれの文化があり、風習があります。

残念な新卒のための生存手引書(心構え編)

 

サピエンス全史(上)文明の構造と人類の幸福

サピエンス全史(上)文明の構造と人類の幸福

 

 

 

定本 想像の共同体―ナショナリズムの起源と流行 (社会科学の冒険 2-4)

定本 想像の共同体―ナショナリズムの起源と流行 (社会科学の冒険 2-4)