俗物による自戒ノート。

家庭と仕事の反省点

少子高齢化は国力の低下に繋がらないという、「非昭和的」主張について

少子化 国力」で検索したらわりと上位に出てきた記事。荒川和久さんという人のブログらしい。

「少子高齢化、人口減少で国が滅ぶとかいう昭和脳の人たちはとっとと退場してください」

少子高齢化で国が滅ぶかどうかはわからないけれども、国力の減衰には繋がるだろうし、結果として滅亡に至る可能性があると考えている。

人口=国力という定義から脱しきれない昭和な人

という記述があるので、そういう意味ではhalberも昭和脳に分類されるのだろう。

これが認識違いだという。

では、どんな論が展開されているのかと思って楽しみに読んでみたら、結局は生産年齢人口の定義をいじるという話だった。要は、時代とともに生産年齢は高まるでしょう、だから大丈夫という話。

大事な視点を忘れているんですよ。高齢化社会とか超高齢化とかいいますけど、何をもって高齢化なのか?今から50年後に果たして65歳は高齢者なのか?むしろ、現役バリバリの生産年齢対象者かもしれない。

今から50年前の1965年、男性の平均寿命は67.74歳でした。当時は55歳定年で、60歳以上を高齢者と呼んでいた。高齢者になって7年で死んでいたわけですね。逆に言えば、死ぬ12年前までは現役で働いていた。

2065年男性の寿命は、84.95歳になります。仮に、その12年前と言えば、72歳です。つまり、65歳なんて全然高齢者じゃなくて、現役で働く年なんですよ、50年後は。

だったら、生産人口は減らない。

たしかに、健康寿命はおおむね平均寿命とともに高まってはきている。だから、働ける年齢が伸びていると言えなくもないだろう。

けれども、体力や思考力が年齢とともに衰えていくのもまた事実。

認知機能が老化する1番の原因は加齢です。60歳を過ぎると認知機能が少しずつ衰えるといわれています。

公益財団法人長寿科学振興財団

マクロで考えても、高齢化率の高まりは恐ろしいほどの医療費の増大をもたらす。これは財政的な制約をもたらす。(いま流行りのMMTであっても、無限に財政支出が増やせるわけではない。インフレ率が制約となる)

年齢階級別1人当たり医療費、自己負担額及び保険料の比較(公的医療保険)(年額)(厚生労働省)

生産人口は減らないが、生産力は落ちるだろうし(生産性という言葉は昨今扱いが微妙なので、敢えて「生産力」としておく)、財政的な制約も増えるので、どう考えても国力は落ちる気がする。

一体、荒川さんはどういう未来を想定しているのだろう。記事の中には、50年後の働き方についても触れられている。

例えば週休4日制の複業が認められている社会。すごく働きたい人は働くことに生き甲斐を見出し、趣味に生きる人はたっぷりある時間を仕事以外に使う。…というより、多分50年後は遊び=仕事になっていると思うんですよね。

凄くユートピアな感じであるけれども、〈テクノロジーの進歩〉でここまで気楽な世界が到来するものだろうか。仮に、そんな技術革新が訪れるのであれば、高齢化率が低い国は、もっと豊かになってるんではないだろうか。(国力というものは、あくまで同時代の国々で比較する相対的なものだ。現代の貧困に喘ぐ人に「確かにあなたは貧しいけれども、テクノロジーの進歩のおかげで、原始時代の人間と比較すれば豊かでしょう?」などと言っても説得力に欠ける)

なんとなく腑に落ちないが、最後まで読んでみる。

それでも昭和脳の爺さんは言い続ける。
いずれにしても少子化人口減少は進む。国力が落ちる。

何を言ってるんだ?

日本だけを見て、少子化人口減少は国が滅ぶという人がいるが、地球規模で見たら、これ以上の人口増加は地球自体の滅亡につながりますよ。

むしろ6000万人くらいが適正人口なんですよ。それでやっていける。

国力の話をしているのに、地球全体の話をするのはすり替えられている感がある。(もちろん、移民を前提にしているのであれば話は別。)

それに、人口規模が問題なのではない。高齢化率が問題なのだ。それを前提に論を進めていたのに、なぜ再反論のくだりで人口規模に話を戻すのか。

ここまで読んで、「これが令和脳か…」という言葉が頭をよぎり、「まぁ、個人がブログで何を主張しようが自由だし」とも思って流そうと思ったけれど、荒川さんという人はメディア露出も結構あって、本を何冊か出版している、わりと有名な人のようだ。

少子高齢化による国力低下というのは、日本の大きな課題である。

対策をした結果、どうにもなりませんでした、なら仕方ない。あるいは、ゆるやかに黄昏の時代を迎えましょう、というのもそれはそれでありかもしれない。または、これからは「国家」という枠組みで「力」をはかるのはナンセンスという考えも嫌いではない。

けれども、「少子化高齢化で国力減衰という主張は昭和脳!」みたいな論を、よくわからない根拠で著名人が吹聴するのはよろしくない。

だから、反論を書いておいた。